Interview

【インタビュー】“姿勢美人”は骨と筋肉が支えてる——整形外科医・樋口直彦先生が語る、大人女性のための体の整え方

若さとは、見た目の美しさではなく「その人らしい生き方」からにじみ出るもの。
そう語るのは、整形外科医としてスポーツ選手から高齢の方まで幅広く診てきた、なか整形外科 院長・樋口直彦先生。
「筋力を保てば、姿勢も保てる。姿勢が整えば、自信も表情も変わる」。
加齢にともなう不調を“我慢するもの”と考えるのではなく、「美しく、健やかに、年齢を重ねる方法はある」と教えてくれる先生の言葉は、40代以降の私たちの心と体にそっと寄り添ってくれます。

今回は、医師を目指した原点から、大人女性に向けた体との向き合い方までをインタビュー。
樋口先生が語る「自分を大切にする習慣」は、忙しい日々に追われがちな私たちにこそ響くメッセージでした。

【お話を伺った人】

医療法人藍整会 なか整形外科 理事長
京都西院リハビリテーションクリニック 院長/整形外科専門医/サントリーサンバーズ(Vリーグ)チームドクター
樋口 直彦(ひぐち なおひこ)医師

帝京大学医学部卒業後、各地の病院で整形外科に従事。2021年より医療法人藍整会 理事長に就任。
スポーツ整形を中心に、骨折・関節外科の治療に幅広く対応。「一人ひとりに寄り添う医療」を信条に、ICT診療も導入。プロアスリートのケア経験をもとに、再発防止・生活の質を高めるリハビリまで総合的に支える。

【医療法人藍整会 なか整形外科】
https://nakaseikei.com/

《「命を支える」よりも「人生を支える」医師になりたかった》

Q.医師を目指したきっかけは?

樋口先生:「子どもの頃から、宇宙や未知の世界への冒険に強く憧れていました。世界中どこへでも行き、どんな場所でも、誰かの役に立てる——そんな職業に就きたいとずっと考えていました。
実は高校卒業時に最初に目指したのは、料理人でした。料理という仕事も、言葉が通じなくても人を笑顔にできる、世界中どこでも通用する“普遍の技術”だと感じていたからです。だからこそ惹かれました。しかし、自身が骨折し、治療に時間がかかった経験から、「治すこと」の力の大きさを実感しました。どんな状況でも人の命と生活を支えられる“医療”こそ、自分が進むべき道だと感じたのです。父や親戚が医師だったという環境もあり、自然とその道へ背中を押されました。冒険家のように、未知の地でも必要とされる存在でありたい。そうして選んだのが、医師という道でした」

聴診器を持っている男性医師
Photo by Sasun Bughdaryan on Unsplash

Q.どうして整形外科だったのか?

樋口先生:「医師という職業を身近に感じていたのは、父が内科医だったからです。自然と「医師=内科医」というイメージを持っていましたし、当初は自分も内科を志していました。
しかし、初期研修を通じて感じたのは、「自分が本当に力を注ぎたいのはここではない」という違和感でした。
私自身、怪我によって進路や人生観が大きく変わった経験があります。さらに、スポーツに打ち込む中で、怪我に苦しむ学生たちを数多く見てきました。
「ただ安静に」と言うだけでなく、その人の人生に真剣に向き合い、怪我を乗り越えたその先へ導く医師でありたい——そう思うようになりました。
特に、ラグビーの聖地・菅平高原での診療所勤務で、実際に選手たちと接する中で、「整形外科は人の未来を支える仕事だ」と確信しました。

私が目指すのは、怪我をする前の状態に戻すだけでなく、それ以上の状態にまで引き上げる医療です。人生が変わるような怪我をした人に、「まだできる」と感じてもらえる未来を届けたい。それが、私が整形外科を選んだ理由です」

手を固定する医師
Photo by Tom Claes on Unsplash

Q. 患者様に寄り添う、オーダーメイド治療とは?

樋口先生:「自分自身の怪我の経験、そしてスポーツに打ち込んでいる学生たちが怪我に苦しむ姿をたくさん見てきました。その中で、「整形外科って、人生を支える大事な分野だな」と思うようになりました。

特に印象に残っているのが、ラグビーの聖地・菅平で診療したときのことです。「試合に出たい」「仲間と最後までやりたい」っていう強い気持ちに対して、ただ「安静にしましょう」とは言えなかった。もっとできることがあるんじゃないか、そう強く感じたんです。
大きな病院だと、どうしても待ち時間が長くなったり、検査も数週間後になったり。ようやく診てもらっても「とりあえず様子を見ましょう」と言われて終わってしまうこともありますよね。怪我で困っているとき、そういう対応に物足りなさを感じる人は多いと思います。
だから自分のクリニックでは、できるだけ待たせない環境を整えています。そのうえで、一人ひとりの状況や希望、生活背景をしっかり考えて、無理なく、その人らしく復帰できるような治療を大事にしています。

たとえば、高校3年生の春に捻挫した学生がいたとして、「ギプス巻いて3週間安静」っていうのが本当にその子にとってベストなのか?受験、最後の大会、家族のサポート体制、いろんなことを一緒に考えて、できる限りの選択肢を探していきたいと思っています。
医師の仕事って、目の前のケガや痛みを見るだけじゃなくて、その人の“これから”を一緒に考えることだと思っています。だからこれからも、一人ひとりに合った治療を、丁寧にやっていきたいと思っています」

PC画面を指差しているところ

Q.40代の女性に今から始めておくべきこととは?

樋口先生:「骨密度の検査や、軽い筋トレはぜひ始めておくといいと思います。特に更年期以降になると、骨がもろくなったり、筋力が落ちて転倒や骨折のリスクが高まるので、「今のうちに備える」意識が大切です。
あと、無理なダイエットは要注意です。体重だけが落ちても、実は骨や筋肉まで痩せてしまっていることもあります。
トライアスロンはちょっと極端かもしれませんが(笑)、たとえば「フルマラソンを完走してみたい」とか、そういうちょっとした目標を持って運動に取り組むのはとても効果的です。
とにかく、「動くこと」を習慣にすること。日常にうまく運動を取り入れて、年齢に負けない体づくりをしてほしいですね」

Photo by Kelly Sikkema on Unsplash
Photo by Kelly Sikkema on Unsplash

Q. 40代の女性が美しくあり続けるためには?

樋口先生:「美しさって、実は姿勢にすごく出ます。姿勢がスッと伸びているだけで若々しく見えますし、動作ひとつでその人の品格って伝わるものなんです。
でもその姿勢を保つには、やっぱり筋力が必要なんですよね。特に体幹の筋肉は、40代を過ぎると何もしないままではどんどん落ちていきます。
猫背、骨盤の歪み、代謝の低下……全部、筋力不足からくることも多いです。だからこそ、美しく年齢を重ねるためには、「姿勢を整える=筋力を鍛える」がすごく大切なんです」

Photo-by-Pavel Danilyuk: https://www.pexels.com/ja-jp/photo/6443472/
Photo-by-Pavel Danilyuk: https://www.pexels.com/ja-jp/photo/6443472/

・カッコイイ大人の女性とは?

樋口先生:「私は、自分を大事にしながらも、周りにも気を配れる“余裕”のある女性はとてもかっこいいと思います。
そういう方って、立ち姿や歩き方にも自然と品があるんですよね。無理に取り繕わなくても、姿勢がきれいで、動作がしなやか。その背景には、きちんと筋力があるという事実があるんです。
また、他人と比べずに“自分のペース”を大切にしている女性も魅力的です。
自分の価値観や軸を持って、自然体で生きている人は、年齢を重ねるごとに美しさや強さが増していく。そんな「ぶれない人」こそ、私が考える“カッコイイ大人の女性”像です」

Photo by Ginny Rose Stewart on Unsplash
Photo by Ginny Rose Stewart on Unsplash

《医師として、人として。患者一人ひとりに寄り添い続ける》

整形外科医・樋口先生の言葉には、ご自身の体験と、患者一人ひとりに真摯に向き合ってきた姿勢がにじみ出ていました。
「医療とは、単にケガを治すだけでなく、“その人の未来”を支えるもの」。
どんな小さなケガであっても、生活や人生に与える影響は大きい。だからこそ、治療に「その人らしさ」を反映しながら、少しでも前向きに歩める道を共につくっていく——。
40代以降、身体に不安を感じやすくなる時期だからこそ、自分のカラダとしっかり向き合い、予防とケアの習慣を取り入れることが大切です。
日常の中で「動く」ことを習慣にし、姿勢を整え、筋力を保つ。
それは、見た目の美しさはもちろん、心の豊かさにもつながっていくはずです。


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PROFILE
merrily編集部 編集長 / 星 ゆうこ
merrily編集部 編集長 / 星 ゆうこ
美容研究家、ライター・エディター、コスメ&サプリプランナー。 コンサルなども行い、美容全般を仕事としています。ライター歴約12年。西洋医学・東洋医学・酵素栄養学・分子栄養学・NASA使用の心理学など学んだ分野は多数、これまで学びにかけてきたお金は200万越え。所持資格は15以上に。merrilyでは編集長として、皆さんが思わず「へぇ〜!」と言ってしまうような、耳よりな情報をお届けします!
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