来たる冬に向けて、寝間着も衣替えの時期。適切なタイミングと、知っておきたい寝間着の選び方のポイントを、睡眠改善インストラクターの資格を持つ“眠りの専門家”に教えていただきました。
merrilyメンバーのみ閲覧可能な部分では、専門家ならではの“細かすぎる”寝間着選びのポイントをお話ししていただきました。睡眠についてお悩みがある方は必見です。
【お話を伺った人】
睡眠改善インストラクター
友部崇さん
着るだけで疲労回復や安眠を促すリカバリーウエア(疲労回復ウエア)を販売するメーカーに所属。商品開発にも携わり、素材や縫製に関しての知識も豊富に有するスペシャリスト。
【リフランス】
https://liflance.jp/
Q.夏用のパジャマでは寒いし、冬用パジャマではまだ暑い中途半端な時期。寝具の衣替えにオススメのタイミングを教えてください!
友部さん:「衣替えのタイミングは難しいですよね。気温の変化が激しいので、冬物を洗濯・天日干しして、いざ使おう!と思った日に限って暑かったり。あるあるです」
筆者:「いざ替えてみると、まだ早かったかと思うことも結構あるんですよね」
友部さん:「衣替えの目安になるのが「室温25℃」です。
人の平均体温は35.5~37.5℃。そこから10℃差し引いた温度になると、涼しいと感じます。つまり、エアコンを使用しないで室温が25℃になった時を、衣替えのタイミングにするのが分かりやすいです。
ただ湿度との兼ね合いもあるため、25℃でも涼しく感じられないケースも。ご自宅の環境に合わせて、タイミングを計ってあげてください。
また、シーツや掛布団など寝具と、寝間着の衣替えは、別々に行なうのもポイントです。同時に冬仕様に替えるのではなく、まずはどちらか片方を変えて、心地よく落ち着いたタイミングでもう片方を変えていきましょう」
Q.モコモコのルームウエアや、学生時代のジャージで寝てしまうことも。寝間着では睡眠の質に影響するのでしょうか?
友部さん:「寝間着は就寝時、ずっと肌に直接触れているものなので、その快適性が睡眠に与える影響は大きいです。
実は、肌から伝わる刺激は自律神経にも影響を与えます。硬い素材よりも柔らかい素材、そして縫い目も肌に当たらない方が、肌が感じるストレスは少なくなります。刺激により交感神経のスイッチがオンになると、眠れなくなってしまうこともあるので、触れて“気持ち良い”と思える素材をチョイスしましょう」
筆者:「確かに、縫い目のチクチクやゴワゴワが気になりだすと、眠れなくなるんですよね。肌の刺激で覚醒してしまってたのですね」
友部さん:「体への締め付けも、睡眠の質を左右します。
人は“1晩に20回程度寝返りを打つ”ことが良いといわれ、睡眠中は何度も寝姿勢が変化します。寝返りには「皮膚温調整」や「血流・体液循環促進」、「筋肉の疲れをほぐす」といった役割があるので、この動きを妨げないよう、寝間着は締め付けがなく、かつ体の動きにフィットすることが大切です。
重ね着による締め付けは見過ごしがちなので、注意が必要です。薄手のものであればさほど影響は無いのですが、肉厚な物になると締め付けを助長するため、1枚でも保温性の高い素材のものを選びましょう」
Q.寝間着に適した素材・選ぶ際に気を付けたいポイントを教えてください!
友部さん:「寝間着選びで気を付けてもらいたいポイントは、「素材」「デザイン」「洗濯」の3つです。
寝間着に適した素材は「肌触りが良く、吸湿・吸水・通気性・保温性があるもの」です。好みもありますが、私は“綿”を推しています。
寝間着の役割で最も重要なのが、「汗を吸う」こと。汗がしっかりと寝間着に吸収されないと、蒸発するときに熱が奪われ(気化熱)体を冷やす原因となってしまいます。
綿は繊維中心部が空洞のため、ポリエステルの約20倍(※)の水分を含むことができるので、「吸湿性」「吸水性」「通気性」に優れた最強素材だと言えます。
※公定水分率が綿は8.5% ポリエステルは0.4%。公定水分率とは、温度20℃・湿度65%における繊維内の水分率。【日本産業規格(L 1030-2:2012 表1)参照】
汗を多くかく方は、吸湿・吸水性が高く、更に通気性と肌ばなれに優れた麻、もしくは綿を強く撚った強撚糸(きょうねんし)を使用した、清涼感のある素材を選ぶのが良いでしょう。
寒がりの方は、保温性・蓄熱性が高いシルク、ウール、綿がおすすめです。
筆者:「麻、綿、シルク、ウール、どれも天然繊維ですね」
友部さん:「そうなんです。ポリエステルなど化学繊維は静電気が発生しやすく、埃などを吸着・付着してしまう恐れがあります。それらが呼吸により体内に取り込まれると、悪影響が出てしまう可能性があるので、アレルギー性疾患をもたれている方は特に注意が必要です。
乾きやすいなどのメリットはもちろんありますが、化学繊維はなるべく避けていただきたいですね」
筆者:「専門家の方が考える、寝間着に適した衣類は何ですか?」
友部さん:「私が考える“ベストオブ・寝間着”は、やはり寝るための衣服として作られている「パジャマ」です。
パジャマとひと口に言っても、襟の有り無し、袖の構造、身幅など、各社それぞれのこだわりが詰まっています。特に寝返りを打つ際に、肩や首周りから冷気が入ってくるので、首周りの設計は注意深く見ましょう。“素材とデザインの掛け算”で選ぶのがポイントです。
また、睡眠時は汗だけでなく新陳代謝によって、皮脂や垢も皮膚から排出されます。この排出物を吸収するのも寝間着の役割の1つです。衛生面から、洗濯機で丸洗い(手洗いでもOK)できる素材が良いでしょう」