ペットボトルのお茶は親しみがありますが、茶葉を使って急須で淹れたお茶を毎日飲んでいる人は減少傾向。そんな中、東京のオフィスエリアに店を構える人気店レストラン『1899お茶の水』の茶バリエ坂上さんに、カジュアルなお茶の楽しみ方や珍しいお茶レシピ開発秘話までお聞きしました!
【お話を伺った人】
株式会社龍名館
“茶バリエ”(日本茶専門家)
日本茶インストラクター
坂上克仁(さかうえ・かつひと)さん
『レストラン1899お茶の水』と、日本茶カフェ「チャヤ1899東京」(港区新橋6)の2店舗のドリンク開発を統括する責任者。入社後に携わった日本茶ドリンクは約100種。
株式会社龍名館日本茶のプロ「茶バリエ」として、茶葉の産地と東京を日本茶と急須でつなぐイベント「ティーカレッジ」の企画責任者としても活躍。
【レストラン1899お茶の水】
https://1899.jp
Q.まず、「茶バリエ」という方の役割、何をされている方なのですか?
坂上さん:「実は、弊社でつくった名称、呼び名なのです。この1899(イチハチキューキュー)で働くスタッフのことを茶バリエと呼んでいます。由来は、なんとなくお気づきかと思いますが、お茶の葉っぱで茶葉、それとソムリエを掛け合わせています」
Q.お茶に特化したお店ができたきっかけを教えてください。
坂上さん:「今年で丸9年、10年目に突入したレストラン1899お茶の水ですが、もともとここは和食を提供する飲食店でした。
2014年にリニューアルする際、神田・御茶ノ水の地で旅館を起源とし、100年以上にわたり営業してきた龍名館のメインダイニングとして、和食にお茶の要素を加えた経緯があります。理由は、お茶の国内消費が減少し、急須離れという現状があるものの、当時から日本茶カフェのようにお茶を有料で提供する新しいスタイルも出てきており、お茶の文化を大切にする龍名館として、そこに光を当てたいという思いから、お店のコンセプトが決まったわけです。
お店の名前は創業年の1899年から取り、文化を継承しつつ新しいことにチャレンジしていくことになりました」
Q.メニュー作成で、大切にしていることは何ですか?
坂上さん:「急須でお茶を淹れることを大切にしていきたいですね。ただ、やはりそうなると渋いイメージ、敷居が高い印象がありますよね。抹茶となると茶道という、さらに専門的で狭き道という感じがして。そこを飲食店として営業していく時に、もうちょっとカジュアルなメニューが必要なのではないかと考えて、コーヒーや紅茶にあるようなメニューを日本茶で作成したという経緯があります。1899では、パウダー状のお茶ではなく、茶葉で淹れたお茶を使用したメニューを提供したいと思っているので、基本的には、葉っぱを急須や茶器を使ってお湯に浸し浸出したお茶をアレンジしていくことを大切にしています」
筆者:「パウダー状のものと、浸出したもの、やはり味や風味は変わりますか?」
坂上さん:「そうですね、やっぱり違いはあります。もちろん、パウダーにはパウダーの良さもありますし、絶対に浸出したほうが良いというものではありませんが、私たちのゴールとしているところは、急須でお茶を淹れることに興味を持ってもらいたいということがあるので、浸出した味の美味しかった記憶というものを感じて欲しいなと思います」
Q.メニュー作成の中で苦労された点、失敗作のお話など教えてください。
坂上さん:「メニューを考えるにあたり、試作をたくさんしなければいけないのですが、私、あまりカフェインが得意ではなくて。人よりも少しカフェイン酔いをしやすいというか。なので、自分の中では一日でできる試作の数が決まっていて、あまり失敗できないという苦労はありました。毎回茶葉のグラム数、お湯の量や浸して待つ時間など、しっかりメモを取っておいて微調整をするなど、あまり失敗しないように心がけています」
筆者:「どのぐらいの期間、試作をされていたのですか?」
坂上さん:「ひとつのメニューをつくるのに、長くて1か月~2か月ぐらいですかね?
完成したと思う瞬間は、ちゃんとお茶ならではの味が感じられるかどうかという部分を重要視しています。それをレシピ化して、提供できるものにするという流れです」
筆者:「炭酸やミルクと混ざっても、負けないような配分ということですよね」
坂上さん:「そうですね。レシピ化をするのに、微調整を重ねました」
Q.今後の店舗展開について
坂上さん:「現在は、ここ(御茶ノ水)と新橋にあるホテル1899東京1階にあるカフェスタイルのお店がありますが、社内では将来的には店舗展開をしていきたいという考えはあります。そのために、味にブレがないよう、レシピをしっかりつくりました」
筆者:「お茶の産地の方々とも、お話をされる機会が多いと思いますが、今後、店舗展開が広がれば生産者の方も喜ばれるのではないですか?」
坂上さん:「仕事柄、いろいろな地域の茶葉生産者とお話しをしたり、実際に産地に伺うこともあって、その時話題になるのは、茶葉の消費が減っているという内容なんですよね。
一時期ブームになった「和カフェ」というジャンルは、いま東京都内でも出店が多いのですが、そういったお店ではお茶のパウダーを使うことが多いんですよね。そして、地方に行くと、生産者の若返りがうまくいかず、ご高齢の方たちだけでつくっていたりするので次に続かず、廃園となってしまうお茶畑も存在します。さらに、茶葉の消費が少なくなっているということは、急須も要らなくなるわけで、急須をつくっている窯が閉業に追い込まれるところも出ています。有名なところで常滑とか、備前など影響は広がります」
筆者:「そのようなお茶に関わる生産者の技術も、まだまだ継承していきたいですよね」
坂上さん:「規模は小さくてもやりたいことはそういうことです。地方生産者と首都圏にお住まいの消費者を結びつけていきたいと思っています」
筆者:「ありがとうございました!」
《取材後記》
普段、茶葉を使ってお茶を飲まない方(筆者も含めて)に、急須で淹れたお茶の美味しさを伝え、お茶の世界の入り口を広くしたいという坂上さんと1899のお店の気持ちがわかりました。
こちらの動画を見て、自分でも香り豊かなほうじ茶ラテをつくってみたくなりました。
【おいしいほうじ茶ラテの作り方!自宅で焙煎、おすすめレシピ|1899】
https://www.youtube.com/watch?v=pPU6RABxf-Q
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