最近、友人同士の会話の中で「がん検診」や「人間ドック」という言葉が出てくることが増えたという方も多いのではないでしょうか?
特に30代後半以降は、仕事や家庭と忙しくなる一方で、健康について改めて考える機会も増える時期。中でも「乳がん検診」は、早期発見・早期治療に直結する大切なステップです。
この連載では、乳腺外科医である峯先生が、乳がん検診の基礎から丁寧に解説。初回となる今回は、乳がん検診の種類や主な検査法について、メリット・デメリットも含めて分かりやすくお伝えします。
【お話を伺った人】
浅草橋西口クリニックMo 副院長
峯 陽子 医師
大学病院で乳癌診療に携わりながら、浅草橋西口クリニックMoでプライマリケアおよび訪問診療を行っている。特にウィメンズヘルスに興味を持っており、女性特有の疾患や体の悩みなど多岐にわたる診療も行っている。
【浅草橋西口クリニックMo】
https://asakusabashi-mo.jp/

《乳がん検診とは?基本の2つの型》
・対策型検診(住民検診)
市区町村など自治体が主体となって行う検診。国の指針に基づき、通常は40歳以上の女性を対象に2年に1回の頻度でマンモグラフィが実施されます。費用は一部自己負担または無料。
目的は地域・集団全体の乳がん死亡率の低下。自治体により対象年齢が異なる場合や、視触診や超音波検査を併用するケースもあります。
・任意型検診(個人や企業での受診)
人間ドックや企業健診などで行われる検診で、年齢を問わず自由に検査を選択可能です。費用は基本的に自己負担。
マンモグラフィ、超音波、MRIなどから選択でき、個人の乳がん死亡リスクを下げることを目的としています。

《乳がん検診で使われる主な検査法》
・視触診
医師や専門の医療者が、目で見て・手で触れて乳房の異常を確認します。かつては主流でしたが、視触診単独では死亡率の低下効果が示されにくく、現在は単独実施が推奨されていません。
ただし、皮膚のへこみや乳頭異常など、外見上の異変に気づける検査として有効です。
・マンモグラフィ
乳房専用のX線撮影検査。乳房を圧迫し、複数方向から撮影して画像化します。
【メリット】
・微細な石灰化を検出でき、早期乳がんの発見に有効
・広範囲を1度に視ることが可能
・検査時間が短い
【デメリット】
・圧迫による痛みを伴うことがある
・高濃度乳房では病変が見つかりづらい
※高濃度乳房とは、乳腺の密度が高く、乳腺組織が多く脂肪組織が少ない状態を指します。マンモグラフィでは乳腺もがんも白く映るため、異常を識別しにくくなるのが特徴です。特に40代の女性は高濃度乳房である割合が高いため、超音波検査の併用が推奨されることがあります。
・少量ながら放射線被曝がある

・乳房超音波検査(エコー)
超音波で乳房内の様子をリアルタイムに映し出す検査。プローブと呼ばれる器具で乳房全体を確認します。
【メリット】
・痛みがなく、被曝もなし
・小さなしこりや高濃度乳房の病変にも対応
・しこりの性状(嚢胞性か充実性か)を評価できる
※嚢胞性とは、水のような液体が溜まっているしこりのこと。良性であることが多く、触ると柔らかいことが特徴です。
※充実性とは、組織が詰まっていて密度の高いしこりのこと。がんの可能性も含まれるため、より詳しい検査が必要になります。
【デメリット】
・石灰化の検出はマンモグラフィに劣る
・検査技術によって診断精度に差が出る
《“なんとなく不安”を“安心”に変えるために》
乳がん検診は、自分の健康と未来を守る第一歩です。
年齢や症状の有無に関係なく、「知っているか」「受けるか」で将来は大きく変わる」——それが乳がん検診の大切さです。
次回は、検診結果で「要検査」となった場合、どのような対応が必要なのかについて詳しくご紹介します。
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