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更年期のホットフラッシュに悩む40代へ。医師が解説する原因・対策・治療法まで

「急に顔が熱くなる」「汗が止まらない」。それ、更年期のサインかもしれません。
40代に入ると少しずつ増えてくる“なんとなく不調”。実は、その多くがホルモンバランスの変化による「更年期症状」に関係しています。
今回は、神谷町カリスメンタルクリニックの院長・松澤美愛医師に、更年期障害の基礎知識や代表的な症状「ホットフラッシュ」について詳しく教えていただきました。
症状が出る前から知っておきたい正しい知識と、すぐに始められるセルフケアをお届けします。

【お話を伺った人】

神谷町カリスメンタルクリニック
院長 松澤 美愛氏

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。更年期については慶應義塾大学病院産婦人科、牧田産婦人科(埼玉県新座市)にて研修を行う。

精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会

【神谷町カリスメンタルクリニック】
https://charis-mental.com/


《更年期障害は誰にでも起こりうる?知っておきたい基本知識》

「更年期障害」について令和4年3月厚生労働省の調査によると、「更年期障害の可能性がある」と考えている人の割合は、40歳代女性で28.3%、50歳代女性で38.3%と高いものの、実際に医療機関を受診して、「更年期障害と診断されたことがある/診断されている人」の割合は40歳代女性で3.6%、50歳代女性で9.1%と低いことが分かりました。

また、更年期障害に関する知識や理解については「よく知っている」と回答した人の割合は20~30歳代女性で約20%、40歳代では約40%、50歳代以上では約50%であり、年齢が進むにつれて知識や理解が広がっているのは、裏を返せば更年期障害による症状や日常生活への影響により悩む人が増えているということです。

そして「更年期に入る前に欲しい/欲しかった情報」として、全年代が「主な更年期障害の内容や程度」「主な更年期症状に対する対処法」と回答しており、早い段階から更年期障害についての知識を得ることは大変有用なことですね。

胸元をおさえている
Photo by Giulia Bertelli on Unsplash

・やがて閉経へ

女性の体では思春期を迎えると「月経」が始まります。
その後は約1か月に1回の周期で月経を繰り返し、性成熟期を迎え、やがて月経は「閉経」へと向かいます。閉経とは卵巣機能が徐々に低下し、最終的に月経が永久に停止することをいいます。
月経が1年以上止まっていることを確認してから、1年前を振り返って閉経と診断されます。

【日本人女性の閉経は50〜51歳】
日本人女性が閉経を迎える年齢はおよそ50歳~51歳と言われており、一般的には閉経をはさんだ45歳~55歳の約10年間を「更年期」と呼びます。ただし閉経には個人差が大きく、早い人で40代前半、遅い人では50代前半で迎えるため、それに伴い更年期にも個人差があります。

ソファーに横たわっている女性
Photo by Adrian Swancar on Unsplash

更年期には様々な症状(更年期症状)が現れますが、その症状が重く日常生活に支障を来すような状態を「更年期障害」といいます。

・更年期障害の主な原因

閉経に伴い卵巣の働きが衰え、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が低下していくことです。今までエストロゲンにより調整されていたからだの機能がうまく働かなくなり、自律神経の調整もうまくいかなくなります。そのようなホルモン変化に加え、加齢に伴うからだの変化、家庭や職場を取り巻く状況にも変化の多い年代ということも合わさり、複合的な影響を受けて更年期障害を発症すると考えられています。
「更年期障害」は人によって症状がさまざまですが、症状として代表的なものの中から、今日は「ホットフラッシュ」について解説したいと思います。

《ホットフラッシュとは?更年期に多い代表的な症状》

急にカッと顔が熱くなるようなのぼせ、ほてり、異常に汗が出て止まらないなどの症状はいわゆる「ホットフラッシュ」といわれます。
ホットフラッシュには首から上は熱いのに手足は冷えるといった冷え、また急にドキドキを感じる動悸などもあります。
これはエストロゲン(卵胞ホルモン)低下に伴い、自律神経の調整がうまくいかず、血管の収縮・拡張のコントロールが出来なくなることが原因です。また、睡眠不足、運動不足、ストレスなども影響を与えます。

顔を手で隠す女性
Photo by Ivan Aleksic on Unsplash

・ホットフラッシュ対策には『ホルモン補充療法(HRT)』が効果的

ホットフラッシュは主にエストロゲン低下に伴う症状ですから、低下しているエストロゲンを補う治療法=『ホルモン補充療法(HRT)』が効果的です。
実際には低下しているエストロゲンに加え、プロゲステロン(黄体ホルモン)を一緒に投与することが一般的ですが、2種類を組み合わせて使用するのはエストロゲン投与による子宮内膜増殖症や子宮内膜がんのリスクを減らすためです。
これらのホルモン剤には飲み薬、塗り薬、貼り薬などと種類が様々ありますので、ご希望により選択することが可能です。

ハンカチを出すところ
Photo by ernest et lulu on Unsplash


【ホルモン補充療法(HRT)は保険適用】
自己負担も少なく、さまざまに現れる更年期症状の中でも、特にホットフラッシュなど血管運動系の症状に有効であるといわれています。
また、更年期を過ぎると心臓・血管の病気や骨粗しょう症が増えてきますが、ホルモン補充療法(HRT)はこれらの病気の予防にも有効だといわれています。ただし病気の既往や身体の状態によってはホルモン補充療法(HRT)を受けられない方もいらっしゃいます。
ご自身の状態をしっかりと伝えた上で医師と相談して決めていく必要があります。薬物による治療法にはホルモン補充療法(HRT)の他、漢方薬、抗うつ薬や抗不安薬などが選択されることもありますし、最近ではプラセンタ療法(胎盤からの抽出成分で作られた製剤)を行っている病院もあります。

薬
Photo by Towfiqu barbhuiya on Unsplash

《自宅でできる!ホットフラッシュを和らげるセルフケア3選》

ただし更年期障害の症状には身体的・心理的・社会的な要因が複雑に影響していることが多く、まずは丁寧な問診により、状況の把握、その上で生活習慣の改善(食事や運動、睡眠時間の確保など)などを行うことをお勧めしています。
それでも症状に改善がない場合には薬物療法が検討されます。
症状もそれほどひどくはなく、病院を受診する前に、まずは自宅で出来るケアをしたいと思っていらっしゃる方には以下をおすすめします。

・生活リズムを整えて自律神経をサポート

規則正しい生活、適度な運動を心がけ、自律神経を整えましょう。
不規則な生活は心身にストレスを生じます。起床時間、就寝時間を決め、生活リズムを一定にして心身への負担が少ない生活を心がけましょう。また適度な運動は影響を受けにくい身体作りに加え、心身の解放感、リフレッシュに繋がり、自律神経を安定化させます。

・食生活で女性ホルモンをサポート

大豆はイソフラボンという女性ホルモンに似た成分を含有しており、エストロゲンと似た働きをします。大豆イソフラボンは摂取から方法と1~2日で排出されてしまうため、毎日摂取することを心がけましょう。

豆腐
Photo by Christina Deravedisian on Unsplash

・ホットフラッシュ時の対策グッズを活用

ホットフラッシュはいつどんな時にも起こるか分かりません。
日頃から体温調整のしやすい服装を心がけ、脱ぎ着しやすいように重ね着をお勧めします。また身体に暑さを感じたときにその部分を冷やすことが出来るよう、暑さ対策グッズなどの持ち歩きやご自宅では保冷剤を使って冷やすことなども有効です。
1度ホットフラッシュが起きると、時と場所によっては焦ってしまいがちです。
そんな時は自律神経のうち交感神経が優位となっており興奮状態となってしまうことから、深呼吸、腹式呼吸などゆっくりとした呼吸を意識して副交感神経を優位に切り替え、落ち着かせましょう。

《「更年期」は人生の折り返し地点。無理せず、医師に相談を》

更年期のイライラ対策には、朝・昼・夜それぞれの食事を工夫することが効果的です。
朝はたんぱく質をしっかり摂ってセロトニンを増やし、昼は腸を元気にする食材でメンタルを安定させ、夜は消化にやさしい食事でリラックスモードへと導きましょう。
日々の小さな工夫が心のバランスを整える助けになります。 無理せず、できることから取り入れてみてくださいね。


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PROFILE
merrily編集部 編集長 / 星 ゆうこ
merrily編集部 編集長 / 星 ゆうこ
美容研究家、ライター・エディター、コスメ&サプリプランナー。 コンサルなども行い、美容全般を仕事としています。ライター歴約9年。西洋医学・東洋医学・酵素栄養学・分子栄養学・NASA使用の心理学など学んだ分野は多数、これまで学びにかけてきたお金は200万越え。所持資格は15以上に。merrilyでは編集長として、皆さんが思わず「へぇ〜!」と言ってしまうような、耳よりな情報をお届けします!
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