「夫にイライラすることが増えた」
「ひとりになりたいと思うことがある」
「今まで平気だったことが、なぜかしんどい」
40代、50代の女性から恋愛やパートナーシップの相談を受けていると、こうした声を聞くことがあります。更年期には、女性ホルモンの変動によって、ほてりや発汗、睡眠の問題、気分の変化など、さまざまな心身の変化が起こることがあります。けれど、この年代に感じる「揺らぎ」は、身体だけの問題ではないように思います。
子育てがひと段落する。仕事での立場が変わる。親が年齢を重ねる。そして、自分自身もこれからの人生を意識するようになる。そんな変化が重なるなかで、「私は、これからどう生きたいのだろう?」という問いが、ふと浮かんでくることがあります。
更年期は、身体の変化と向き合うと同時に、これまでの人生を振り返り、これからは自分自身のことも、もっと大切に生きていく。そんな人生の第2章の入り口なのかもしれません。
今回は恋愛・パートナーシップ構造研究家の私、妃谷朱理(ひめたに しゅり)が、更年期と恋愛・パートナーシップの関係性の視点からお届けします。
【お話を伺った人】
株式会社アモネスフィア代表
恋愛・パートナーシップ構造研究家
妃谷朱理(ひめたに しゅり)さん
5万件を超える個別相談・指導実績をもとに、恋愛を感情論ではなく「意思決定」と「関係性の構造」として捉える独自メソッドを確立。講座や個別セッション、奥出雲でのリトリートなどを通じ、持続可能なパートナーシップの構築を支援している。
【公式YouTube「しゅりの部屋」】
https://www.youtube.com/@shuriroom

《「夫への不満」は、本当に夫だけの問題?》
更年期を迎えるころ、パートナーへのイライラが増えたと感じる女性もいます。
「夫といると疲れる」
「以前なら気にならなかったことまで腹が立つ」
「もう愛情がなくなったのかもしれない」
もちろん、実際に夫婦の間に解決すべき問題がある場合もあります。けれど、1度立ち止まって考えてみてほしいのです。今感じている違和感は、本当にすべて「夫への不満」なのでしょうか。
妻として、母として、仕事をする人として。いくつもの役割を大切にしながら生きてきた女性が、人生の後半にさしかかったとき、「私は本当は何が好きだった?」「これから、どんな毎日を過ごしたい?」「どんな自分で年齢を重ねていきたい?」と、自分自身に意識が向き始めることがあります。
自分の生き方を見つめ直せば、その隣にいるパートナーとの関係も違って見えてくるのは自然なことです。そこで生まれた違和感を、すべて”夫が嫌になった”と解釈してしまうと、本当は自分自身に向けられていた大切な問いを見失ってしまうかもしれません。

・更年期からは「自分自身」も大切なひとりに
これまで「子どもがいるから」「夫の仕事があるから」「家族にとって、こちらの方がいいから」と選択してきたことも、きっとたくさんあるでしょう。それは決して、自分を犠牲にしてきたということではありません。家族を大切にしてきたことも、自分が選び、大切にしてきた人生の一部です。だから、それまでの人生を否定する必要はありません。
ただ、これからはそこに、「自分自身」も大切なひとりとして加えてみる。「家族にとって何がいい?」だけではなく、「私はどうしたい?」「私は何を心地よいと感じる?」と、自分にも問いかけてみるのです。
自分を大切にすることは、家族を大切にしなくなることではありません。まして、夫から離れたり、今の生活を大きく変えたりすることでもありません。「夫がこうしてくれたら私は幸せなのに」と、幸せのすべてを相手に委ねるのではなく、自分の心地よさや喜びにも自分で目を向けていく。それが、人生の後半を「自分をより大切に生きる」ということなのだと思います。

・「自分がどうしたいか」を考えるのが怖くてもいい
とはいえ、「これから私はどう生きたい?」と聞かれても、すぐには分からない人もいるでしょう。長い間、家族や周囲のことを考えてきた人ほど、自分のことを考えることに戸惑うかもしれません。中には、「本当の気持ちに気づいたら、今の生活を変えたくなるのでは?」「夫婦関係を見直したら、別れることになってしまうのでは?」と、怖さを感じる人もいるかもしれません。
でも、答えを出したからといって、何かを大きく変える必要はありません。仕事を辞めなくてもいい。新しい夢を見つけなくてもいい。夫婦の形を変えなくてもいい。まずは、「私は今、どう感じている?」と、自分の気持ちを置き去りにしないことからで十分です。

・実は、隣にいる男性も変化しているかもしれない
そして、この年代のパートナーシップについて考えるとき、知っておきたいことがあります。更年期のような心身の変化は、女性だけに起こるものではありません。
男性にも、加齢に伴う男性ホルモンの低下などによって、疲れやすさや意欲の低下、気分や睡眠、性機能などに変化が現れることがあります。一般に「男性更年期」と呼ばれ、症状を伴う場合にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)として扱われることがあります。
つまり、40代、50代の夫婦は、「変化する妻」と「それを理解する夫」ではありません。2人とも、それぞれの形で変化の時期を迎えている可能性があるのです。男性もまた、体力の変化、仕事での立場、親の老い、定年後の人生などを意識し、「自分はこれから、どう生きたいのだろう」と考え始めているかもしれません。
長く一緒にいるからこそ、「相手のことは分かっている」と思いがちです。でも、20年前の自分と今の自分が違うように、20年前のパートナーと今のパートナーも同じではありません。

・スキンシップのすれ違いも、2人の変化のひとつ
その変化が表れやすいもののひとつが、スキンシップや性生活です。性欲の変化には個人差があり、以前より性的な欲求を強く感じる女性もいれば、以前ほど求めなくなる女性もいます。男性側にも心身や性機能の変化があります。
過去のセックスレスで「求めてほしかった」「受け入れてほしかった」と傷ついた経験が、現在の夫婦関係に影響していることもあるでしょう。一方で、そのときパートナーにも、言葉にできなかった身体や心の変化があったのかもしれません。
大切なのは、「どちらが悪かったか」を決めることではありません。同じ時間を過ごしながら、2人はそれぞれ何を感じていたのか。それを知り直すことです。

《人生の第2章を始めるために、3つのこと》
1.「夫への不満」と「自分自身の違和感」を分けてみる
夫にイライラしたとき、「夫が変われば、本当に私は満たされる?」と1度自分に聞いてみます。そして、「もし誰にも遠慮しなくていいとしたら、これからどんな時間を過ごしたい?」とも聞いてみる。夫婦の問題だと思っていたものの中に、自分自身の生き方への違和感が混ざっていることがあります。
2.小さな「私はどうしたい?」を増やしていく
いきなり人生の答えを出す必要はありません。「今日は何を食べたい?」「休日をどう過ごしたい?」「誰といると心地いい?」「何をしているときの自分が好き?」日常の小さな選択から、自分の感覚を取り戻していきます。自分を大切に生きることは、大きな人生の決断ではなく、こうした小さな選択の積み重ねでもあります。
3.相手の「これから」も聞いてみる
自分自身に目を向け始めたら、パートナーにも聞いてみてください。「あなたは、これからどんなふうに生きたい?」大切なのは、自分と同じ答えを求めないことです。自分を大切にするということは、同時に、相手にも相手が大切にしたい人生があることを認めることでもあります。
そのうえで、「じゃあ、これから私たちはどんな2人でいたい?」と話してみる。昔の2人に戻るのではなく、今の2人に合う関係をつくっていくのです。

《更年期は、「失っていく時期」だけではない》
更年期という言葉には、どこか「若さを失っていく時期」というイメージがあります。でも、別の見方もできます。これまで家族や社会の中でたくさんの役割を担い、さまざまな経験をしてきたからこそ、「ここからは、自分自身のことも、もっと大切にして生きてみよう」と思える年代になったとも言えるのではないでしょうか。
私は私を大切にする。そして、隣にいる人にも、その人が大切にしたい人生があることを認める。そのうえで、「これからも一緒に生きるなら、どんな二人でいたい?」と、もう一度2人の関係を選んでいく。
更年期は、以前の自分に戻るための時期ではありません。夫婦もまた、以前の二人に戻らなくていい。人生に第2章があるように、パートナーシップにも第2章があっていい。更年期は、自分をこれまで以上に大切にしながら、その新しい扉を開いていくタイミングなのかもしれません。
文:妃谷朱理(ひめたに しゅり)
編集:星ゆうこ
※更年期にはさまざまな身体的・精神的症状が現れることがあります。つらい症状や日常生活への支障がある場合は、婦人科などの医療機関に相談してください。男性にも加齢に伴う心身の不調が現れることがあるため、気になる症状が続く場合は専門の医療機関への相談をご検討ください。
※このコラムは健康情報の提供を目的としたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。体調に不安がある場合は、専門の医療機関にご相談ください。
※コンテンツ内の全てのイラスト・画像・文章の転用はご遠慮ください。許可のない転載・複製・転用等は法律で罰せられます。
Not sponsored.